第5章 動詞の法


◆1 未完了形の3つの法

*これまで私たちが学んできた未完了形の動詞は、すべて直説法におかれた動詞でした。しかし、未完了形には他に、接続法・要求法・命令法という3つの法があります。この課から第16課にかけて、私たちはこの3つの法を学ぶことになります。

*この3つの法の活用形はいずれも、これまで学んだ未完了形直説法の活用形をベースにしています。活用接尾辞が変化するだけで、活用接頭辞は直説法のままです。従って、基本形でも派生形でも、活用のパターンは同一です。

*直説法からの語形変化は、第3語根の母音の形態によって定まります。第3語根の母音の形態を基準にすると、未完了形直説法の活用形は、以下のように分類できます。

①短母音人称群(S):第3語根の母音を、原則的には [u] に変えるだけで、特別な活用接尾辞を付加することのない人称です。具体的には、三人称単数男性形・女性形、二人称単数男性形、一人称単数・双数・複数形がこの人称群に属します。

②長母音人称群(L): 第3語根の母音を [i:] [a:] [u:] のいずれかの長母音に変え、更に活用接尾辞として نَ または نِ を付加する人称です。具体的には、二人称単数女性形、三人称双数男性形・女性形、二人称双数形、三人称複数男性形、二人称複数男性形がこの人称群に属します。

③無母音人称群(M):第3語根の母音をスクーンに変え、更に活用接尾辞として نَ を付加する人称です。具体的には、三人称複数女性形、二人称複数女性形がこの人称群に属します。

*この3つの法の語形変化は、一定の規則に基づいて、ほぼ自動的に導き出せます。では、接続法の活用から始めましょう。


◆2 接続法の作り方

*未完了形の接続法は、未完了形の直説法から以下のように作ります。

①短母音人称群、即ち、三人称単数男性形・女性形、二人称単数男性形、一人称単数・双数・複数形では、最終音節の母音をダンマからファタハに変えます。ただし、一部の弱動詞では例外的に直説法のままですが、これについては次項で述べます。

(例1) أَبْعَثُ 私は送る[直説法]→ أَبْعَثَ [接続法]

(例2) يَرُدُّ 彼は返す[直説法]→ يَرُدَّ [接続法]

(例3) أَقُولُ 私は言う[直説法]→ أَقُولَ [接続法]

②長母音人称群、即ち、二人称単数女性形、三人称双数男性形・女性形、二人称双数形、三人称複数男性形、及び二人称複数男性形では、語末の ن を脱落させます。

(例1) تَخْرُجِينَ 貴女は出る[直説法]→ تَخْرُجِي [接続法]

(例2) يَتَجَوَّلاَنِ 彼ら二人は散策する[直説法]→ يَتَجَوَّلاَ [接続法]

なお、三人称複数男性形及び二人称複数男性形では、語末の ن を脱落させた後、「防御のアリフ」を書き添えます。

(例1) تَأْتُونَ あなた方は来る[直説法]→ تَأْتُوا [接続法]

(例2) تَتَغَدَّوْنَ あなた方は昼食をとる[直説法]→ تَتَغَدَّوْا [接続法]

③無母音人称群、即ち、三人称複数女性形と二人称複数女性形では、直説法のままです。

(例) يَشْرَبْنَ 彼女たちは飲む[直説法]→ يَشْرَبْنَ [接続法]

*参考のために、基本形動詞の活用を掲げます。なお、不規則動詞のS人称群とM人称群については、それぞれの代表的な人称の活用にとどめます。

[11−1]規則動詞 فَعَلَ の接続形


未完了形直説法

未完了形接続法


単数形

双数形

複数形

単数形

双数形

複数形

3男

S

يَفْعَلُ

L

يَفْعَلاَنِ

L

يَفْعَلُونَ

S

يَفْعَلَ

L

يَفْعَلاَ

L

يَفْعَلُوا

3女

S

تَفْعَلُ

L

تَفْعَلاَنِ

M

يَفْعَلْنَ

S

تَفْعَلَ

L

تَفْعَلاَ

M

يَفْعَلْنَ

2男

S

تَفْعَلُ


L


تَفْعَلاَنِ

L

تَفْعَلُونَ

S

تَفْعَلَ


L


تَفْعَلاَ

L

تَفْعَلُوا

2女

L

تَفْعَلِينَ

M

تَفْعَلْنَ

L

تَفْعَلِي

M

تَفْعَلْنَ

1共

S

أَفْعَلُ

S

نَفْعَلُ

S

نَفْعَلُ

S

أَفْعَلَ

S

نَفْعَلَ

S

نَفْعَلَ


[11−2]不規則動詞基本形の接続形

完了形

法

3単男(S)

2単女(L)

3双(L)

3複男(L)

3複女(M)


قَرَأَ

直

يَقْرَأُ

تَقْرَئِينَ

يَقْرَآنِ

يَقْرَؤُونَ

يَقْرَأْنَ

接

يَقْرَأَ

تَقْرَئِي

يَقْرَآ

يَقْرَؤُوا

يَقْرَأْنَ


رَدَّ

直

يَرُدُّ

تَرُدِّينَ

يَرُدَّانِ

يَرُدُّونَ

يَرْدُدْنَ

接

يَرُدَّ

تَرُدِّي

يَرُدُّا

يَرُدُّوا

يَرْدُدْنَ


وَقَفَ

直

يَقِفُ

تَقِفِينَ

يَقِفَانِ

يَقِفُونَ

يَقِفْنَ

接

يَقِفَ

تَفِقِي

يَقِفَا

يَقِفُوا

يَقِفْنَ


قَالَ

直

يَقُولُ

تَقُولِينَ

يَقُولاَنِ

يَقُولُونَ

يَقُلْنَ

接

يَقُولَ

تَقُولِي

يَقُولاَ

يَقُولُوا

يَقُلْنَ


◆3 弱動詞の接続形

*弱動詞のうち、未完了形の特徴母音として [a] を持つ بَقِيَ [Ia] 型または نَهَى [Aa] 型の基本形弱動詞、及び弱動詞派生形の第5形・第6形では第3語根がアリフ・マクスーラに変わっているため、例外的に直説法のままです。

(例1) أَبْقَى 私は留まる[直説法]→ أَبْقَى [接続法]

(例2) نَرَى 我々は見る[直説法]→ نَرَى [接続法]

*それ以外の場合は、すべて本則に従います。

(例) أَدْعُو 私は招く[直説法]→ أَدْعُوَ [接続法]

[11−3]弱動詞基本形の接続形

完了形

法

3単男(S)

2単女(L)

3双(L)

3複男(L)

3複女(M)


دَعَا

直

يَدْعُو

تَدْعِينَ

يَدْعُوَانِ

يَدْعُونَ

يَدْعُونَ

接

يَدْعُوَ

تَدْعِي

يَدْعُوَا

يَدْعُوا

يَدْعُونَ


بَنَى

直

يَبْنِي

تَبْنِينَ

يَبْنِيَانِ

يَبْنُونَ

يَبْنِينَ

接

يَبْنِيَ

تَبْنِي

يَبْنِيَا

يَبْنُوا

يَبْنِينَ


رَأَى

直

يَرَى

تَرَيْنَ

يَرَيَانِ

يَرَوْنَ

يَرَيْنَ

接

يَرَى

تَرَيْ

يَرَيَا

يَرَوْا

يَرَيْنَ


بَقِيَ

直

يَبْقَى

تَبْقَيْنَ

تَبْقَيَانِ

تَبْقَوْنَ

يَبْقَيْنَ

接

يَبْقَى

تَبْقَيْ

تَبْقَيَا

تَبْقَوْا

يَبْقَيْنَ


◆4 派生形動詞の接続形

*派生形でも、作り方は同一です。参考のため、第4形の活用と第5形弱動詞の活用を掲げます。

[11−4]派生形動詞の接続形

完了形

法

3単男(S)

2単女(L)

3双(L)

3複男(L)

3複女(M)


أَدْخَلَ

直

يُدْخِلُ

تُدْخِلِينَ

يُدْخِلاَنِ

يُدْخِلُونَ

يُدْخِلْنَ

接

يُدْخِلَ

تُدْخِلِي

يُدْخِلاَ

يُدْخِلُوا

يُدْخِلْنَ


أَطْفَأَ

直

يُطْفِئُ

تُطْفِئِينَ

يُطْفِئَانِ

يُطْفِئُونَ

يُطْفِئْنَ

接

يُطْفِئَ

تُطْفِئِي

يُطْفِئَا

يُطْفِئُوا

يُطْفِئْنَ


أَتَمَّ

直

يُتِمُّ

تُتِمِّينَ

يُتِمَّانِ

يُتِمُّونَ

يُتْمِمْنَ

接

يُتِمَّ

تُتِمِّي

يُتِمَّا

يُتِمُّوا

يُتْمِمْنَ


أَوْقَفَ

直

يُوقِفُ

تُوقِفِينَ

يُوقِفَانِ

يُوقِفُونَ

يُوقِفْنَ

接

يُوقِفَ

تُوقِفِي

يُوقِفَا

يُوقِفُوا

يُوقِفْنَ


أَرَادَ

直

يُرِيدُ

تُرِيدِينَ

يُرِيدَانِ

يُرِيدُونَ

يٍُرِدْنَ

接

يُرِيدَ

تُرِيدِي

يُرِيدَا

يُرِيدُوا

يٍُرِدْنَ


أَلْقَى

直

يُلْقِي

تُلْقِينَ

يُلْقِيَانِ

يُلْقُونَ

يُلْقِينَ

接

يُلْقِيَ

تُلْقِي

يُلْقِيَا

يُلْقُوا

يُلْقِينَ


تَغَدَّى

直

يَتَغَدَّى

تَتَغَدَّيْنَ

يَتَغَدَّيَانِ

يَتَغَدَّوْنَ

يَتَغَدَّيْنَ

接

يَتَغَدَّى

تَتَغَدَّيْ

يَتَغَدَّيَا

يَتَغَدَّوْا

يَتَغَدَّيْنَ


*なお、弱動詞の派生形の場合、既に述べたように第5形と第6形では、短母音人称群の接続形は例外的に未完了形のままです。

(例1)第8形: أَشْتَرِي 私は買う[直説法]→ أَشْتَرِيَ [接続法]

(例2)第5形: تَتَغَدَّى 彼女は昼食を取る[直説法]→ تَتَغَدَّى [接続法]


◆5 接続法の用法

*《接続法要求詞》と呼ばれる語の後では、自動的に接続法が採用されます。

*最も頻繁に用いられるのは、接続詞の أَنْ です。この接続詞は「〜できる」「〜したい」

「拒む」「試みる」「怖れる」「好む」「望む」「希求する」などという意味を表す動詞とともに用いられます。接続法を用いれば、動名詞を知らなくても同じ意味が表現できます。

(例) أَرَدْتُ أَنْ أُسَلِّمَ عَلَيْكَ 私はあなたに挨拶したくなりました。[接・1単]

*「〜するために」という肯定目的を表す接続詞 لِكَيْ / كَيْ / لِ の後でも、自動的に接続法が採用されます。

(例) أَنَا ذَاهِبَةٌ الآنَ إِلَى البَرِيدِ لِأَشْتَرِيَ طَابِعًا بَرِيدِيًّا

私はこれから切手を買うために郵便局に行きます。[接・1単]

*「〜しないために」という否定目的を表す接続詞 لئَلاَّ / لِكَيْلاَ / كَيْلاَ の後でも、同様です。

(例) أُرِيدُ أَنْ أَصِلَ عِنْدَ فَتْحِ البَابِ لِكَيْلاَ يَكُونَ كَثِيرٌ مِنَ الاِزْدِحَامِ

私は極度の混雑がないように戸が開く時に着きたいのです。[接・3単男]

*否定の未来詞 لَنْ や限度を示す接続詞 حَتَّى が用いられた時も同様です。

(例) لَنْ تَخْرُجِي مِنْ هُنَا حَتَّى تَشْرَبِي مَعِي شَيْئًا

あなたは私と一緒に何か飲むまではここから出てはいけません。[接・2単女]

<注>なお、主文の動詞が完了形におかれている時は、限度を示す接続詞 حَتَّى に後続する動詞は完了形におかれます。

(例) مَا خَرَجْتُ حَتَّى شَرِبْتُ قَهْوَةً

私はコーヒーを飲むまで出ませんでした。[完・1単]


◆6 祈願文(2)

*祈願文が多くの場合、完了形動詞を用いて表されることは既に第10課で学びましたが、

この課には同じタイプの祈願文が出ています。

(例) سَلَّمَكِ اللَّهُ 神があなたを健やかになさいますように。


◆7 共性名詞

*名詞の中には、男性名詞としても女性名詞としても用いられるものがあります。これを《共性名詞》といいますが、この課には二つ例が出ています。

(例1) كَيْفَ حَالُكِ ؟ ご機嫌いかがですか。

(例2) وَفِي طَرِيقِي إِلَى البَرِيدِ مَرَرْتُ بِدَارِكَ

郵便局に行く途中、私はあなたの家の前を通りかかりました。